どっぷりスキる

2025/02/18

【前編】「人と人が仲良くなる」ことで生まれるもの ―「OSIRO」が創るコミュニティとは ―

たにぐち

オシロ株式会社が手掛けるコミュニティ専用オウンドプラットフォーム「OSIRO」(以下、「OSIRO」)は、アーティストやクリエイターが創作活動を続けられることを願い誕生しました。創作活動を継続していくためになぜコミュニティが必要なのか。また、長くコミュニティを運営していくために必要なことは何なのか。長年コミュニティと向き合われてきた代表取締役社長の杉山氏にお話を聞きました。

杉山博一オシロ株式会社(https://www.inflorescence.co.jp/) 代表取締役社長

1973年生まれ。アーティストやデザイナーとしての活動を経て、32歳の時に日本初のIFA(独立系資産アドバイザー)金融サービスを共同創業。退任後、ニュージーランドと日本の2拠点居住を経て「日本を芸術文化大国にする」というミッションのために東京に定住し、2017年オシロ株式会社設立。

「OSIRO」が生みだすものとは

コミュニティ専用のオウンドプラットフォーム「OSIRO」
クリエイターのみならずブランド・企業向けに「人と人が仲良くなること」を通じて、継続的な「お金とエール」を生みだすことを目的としたオンラインコミュニティの立ち上げ、運用を支援。

開発のきっかけから教えていただけますでしょうか?

杉山 博一さん(以下・杉山さん)

 僕はもともと、30歳までアーティストをしていました。アーティストとして絵を描いて食べていくことは相当難しかったので、並行してフリーランスのデザイナーとしての活動もしていました。

 でも、30歳まで続けてきたけど一向に芽の出ない自分にはアートの才能がないんだなと自覚したんです。きっぱりアーティスト活動への終止符を打ちました。その後はフリーランスのデザイナー1本でやっていくことにしたのですが、どこにも属してない、上司もいない、同僚もいないという状態にものすごく孤独を体験しました。創作活動の孤独は問題ないんですけど、非創作活動の孤独って健康上もあんまりよくないなと実感しました。

 この30歳の時にアーティストを辞めたことと8年間の孤独を味わった2つの原体験が、アーティストやクリエイターが活動し続けられる仕組みをつくろうという、「OSIRO」を 開発するきっかけになってます。

アーティストやクリエイターが活動を継続するために必要なこととはなんでしょうか?

杉山さん

 僕の経験上、お金があっても活動は続けられなかったんです。お金だけでもだめ、「お金とエール」の両方がないと続けられない。そのためには、毎月お金を出してでも応援したいという高い熱量を持った応援者が一箇所に集い「応援団」になることが必要だと考えました。

 応援してくれる方も、単独応援だと、いつか応援が途絶えてしまう可能性がある。人って1人だと続けられない性質があるから、応援するにも仲間が必要なんです。なので、お金を出してでも応援したいという応援者で応援団をつくり「お金とエール」を継続的に生みだすことができれば創作活動が継続できる。

 じゃあ、応援者が応援団になるためにはどうしたらいいのかを考えました。そのためには課金管理だけではなく、「人と人がどうやって仲良くなるか」を解明していかなければならない。その仕組みがアーティストやクリエイターに必要で、たどり着いたのがオンライン上でのコミュニティという手段でした。

コミュニティ運営において何よりも大事なこと

クラウドファンディングやSNSのようなオープンなつながりではなく、クローズドなつながりを求めたのはなぜでしょうか?

杉山さん

 まず、人と人が仲良くなり、「お金とエール」を継続的に生み出すことを考えたとき、毎月お金を出す人がバラバラに存在しているクラウドファンディングでは要件を満たせませんでした。

 現在ではSNSは当たり前になりましたけど、いわば無料の公園みたいな感じで、いろんな人がいるわけですよね。その中にはナイフを持った人もいるかもしれなくて、ふいに刺される可能性もある。そうなると誰も本心を言わなくなってしまいます。SNSの強みは、いろんな人に拡散ができて、いつでもどこでもつながることができます。一方で、疲弊している方も多くいますね。

 無料の公園があることも大事だけど、「鍵付きのラウンジ」も必要だと思っています。このラウンジには、同じ鍵を持った仲間しか入られないので、ナイフから身を守るための鎧も盾も要らない。だれもが安心して本来の自分を出せる。そうすると、本音を同じ熱量で語り合うことができます。コミュニケーション量は自然と増えて行き、人と人がより仲良くなっていける場になると考えました。

「人と人が仲良くなる」仕組みをつくるために必要なことは何でしょうか?

杉山さん

 「システムの設計は、そのシステムを設計する組織のコミュニケーション構造を鏡映する形になる」というアメリカのプログラマー メルヴィン・コンウェイが提唱した原則があります。「人と人が仲良くなる」仕組みをつくる組織は、自分たちが仲良くないと、その仕組みはつくられないということ。オシロは社員同士、めちゃくちゃ仲が良いです。

 本当にみんな仲が良くて、月曜日から金曜日までずっと仕事で一緒にいるのに週末も一緒に遊んでいたりして。こういう状態じゃないと、「人と人が仲良くなる」システムはつくれないと思っているので、そのための取り組みや制度はどんどん増えていますね。

 あと、マサチューセッツ工科大学組織学習センターのダニエル・キム氏が提唱している「成功の循環」というモデルがあります。これはつまり「仕事で結果を出すためには、まずはそれらをつくり出す『職場の人間関係』を良好にすることからしないとですよ」ということを提唱されています。人間関係を良好にする方法については、挨拶をしっかりしましょうとか、感謝を伝えましょうとか、当たり前のことしか言っていない。

 オシロでは、挨拶がしやすいとか、ありがとうが言いやすくなる仕組みづくりや改善をどんどん行っています。

ファンの熱量を保つために

コミュニティはつくっただけではだめで「醸成する」といいますが、オシロにとって「コミュニティを醸成する」とはどういうことでしょうか?

杉山さん

 「醸成」ってなかなか難しいですよね。
例えば、ぬか床をイメージすると、ぬか床って微生物の発酵バランスを保つために手を入れて混ぜないといけないですよね。放置してもダメ、手を入れすぎてもダメ、適度にかき混ぜることがポイントです。昔は、地域のコミュニティの中をおせっかいのおばさまが人間関係をうまくかき混ぜてくれてたじゃないですか。

 僕らは、オンライン上でコミュニティをどうかき混ぜられるかを真面目に考えていて、「おせっかいのギリギリを攻める」ことを意識しています。うまくかき混ぜて、点でバラバラだったコミュニティのメンバー=「ファン」がつながり、仲良くなっていく。それが、コミュニティが醸成していくというひとつのイメージです。

 僕は、いろいろなコミュニティに入っていて、この年からでも親友が何人もできています。やりたいと思ってできていなかったことが、コミュニティで仲間がいるからこそ実現できるんです。それは共通の価値観を持つ仲間とつながりがあるからこそ。そういうことがたくさんあります。コミュニティが醸成するとみんなが応援してくれるようになり、オーナーだけじゃなく、メンバーも自分の自己実現に近づける場になっていくということを実感しています。

「コミュニティの醸成」にはそこに「熱」が必要かと思うのですが、コミュニティメンバーであるファンの熱量を高めるためにはどうすればいいのでしょうか?

杉山さん

 「OSIRO」では、コミュニティメンバーのアクション量を数値化した「熱量」を測れます。誰がどれくらいコミュニティ内で活動をしているかなど、複合的な指数をメンバーの人数で割った「熱量指数」をダッシュボードで確認できるようになっています。コミュニティメンバーの熱量が高すぎるのも燃え尽き症候群になってしまうので、この熱量指数を見ながらかき混ぜ具合を調整していくという感じです。

 あと、ファンは効率的な情報のコミュニケーションよりも非効率なコミュニケーションを大事にしていると思っています。スターバックスコーヒーが、カップに「おつかれさま!」と手書きでメッセージを書くような。あの、ひと手間は非効率だけど、その非効率なことが感情を動かすことにすごく効いていると思っています。私たちも感情をなるべく共有できるように意識していますね。

―杉山さん、ありがとうございます。
 後編では、杉山さんが「OSIRO」を通じて成し遂げたいことやコミュニティが生む価値についてお話いただきます。後編もお楽しみに!

編集者たにぐち

様々なコミュニティがある中、私は「人と人が仲良くなる」ことを追求されたオシロ様が創るコミュニティに入りたい。と率直に思いました!

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